辞めたい理由を聞かれると、困る。
不満が言えるほど、ひどい職場じゃない。
給料は悪くない。
人間関係も、まあまあ。
仕事も、それなりにできるようになった。
なのに、月曜の朝は、目覚ましを止めてから起き上がるまでが長い。
こういうとき、真面目な人ほどちゃんと動く。
本を読む。
資格を調べる。
転職サイトに登録してみる。
診断を受けて、強みを言葉にしてみる。
目標を立て直して、手帳に書く。
全部やった人も、いると思う。
でも、変わらなかった。
翌週には、元の毎日に戻っていた。
ここで多くの人が、自分を疑い始める。
「贅沢な悩みなのかな」
「みんな、こんなものなのかな」
「結局、自分が甘えてるだけかもしれない」
「でも、この感じがあと20年続くのか」
私は800人以上のキャリアの話を聴いてきた。
その中で何度も出会ってきたのが、この「辞めたいわけじゃない」の人たちだった。
深刻な顔で来る人より、ずっと多い。
だから、先に結論を言います。
問題は、職場ではない。
あなたのやる気でもない。
これまでのやり方と、今のあなたがズレ始めた。
それだけです。
20代の頃は、頑張り方がシンプルだった。
目の前の仕事を覚える。
期待に応える。
できることを増やす。
このやり方で、ちゃんと成果が出た。
でも30代のどこかで、この方程式は切れる。
できることは増えたのに、手応えが減っていく。
評価はされているのに、自分が薄まっていく感じがする。
停滞は、故障ではない。
「これまでの走り方では、ここから先に進めない」という切り替えのサイン。
じゃあ、なぜ切り替えられないのか。
ここに、見えないブレーキがある。
準備が整うまで動けない人がいる。
どう思われるかを考えて、止まる人がいる。
「自分なんかが」で踏み込めない人がいる。
誰にも相談できないまま、一人で抱える人がいる。
完璧主義。他人の目。自己疑念。孤立。
私はこれを「見えないブレーキ」と呼んでいる。
大事なのは、これが性格ではなく構造だということ。
性格なら、変えるのは難しい。
でも構造なら、わかれば外せる。
じゃあ、何から手をつけるか。
特別なことはいらない。今日できることが3つある。
ひとつ。停滞を感じた場面を、1つだけ書き出してみる。
「なんとなくモヤモヤする」を、「会議で意見を飲み込んだ火曜の午後」まで具体的にする。
モヤモヤは、場面に変わった瞬間から扱えるようになる。
ふたつ。「辞めたいか」ではなく、「何が変われば、もう少しやれそうか」と自分に聞いてみる。
辞めるかどうかの二択は、たいてい早すぎる。
その手前に、動かせる条件がいくつもある。
みっつ。自分のブレーキがどれか、確かめる。
踏まれているペダルの場所がわかれば、外し方は選べる。
あなたは飽きたわけじゃない。
甘えているわけでもない。
これまでちゃんと走ってきた人にだけ、このズレは起きる。
構造は、わかれば変えられる。